がん治療中の方は、一般の方以上に感染予防の配慮を
新型コロナウイルスの感染率や重症化率を心配されるがん患者さんは多いかと思いますが、現時点でわかっている範囲で、中国からの報告では、がん患者さんは一般の健康な人に比べ、感染率は2倍程度高いようです。一方、亡くなった人の割合は7.6%であり、80歳以上の方(21.9%)、循環器系の持病がある方(13.2%)、糖尿病患者(9.2%)、慢性呼吸器疾患をお持ちの方(8.0%)よりは低いとされています。
とはいえ、抗がん剤治療や血液幹細胞移植(骨髄移植)などにより免疫機能が低下している患者さんでは、やはり重症化のリスクは高くなるので、一般の健康な方以上に、「3つの密」(換気の悪い密閉空間・人が密集する場所・密接した近距離での会話)を避ける、手洗いをこまめに行う、などの配慮が必要になります。
通勤をされている場合は勤務先に相談をして在宅勤務ができるようお願いし、できるだけ移動を避けるのが良いでしょう。また、がん患者さんと同居するご家族の方は、自身の健康状態に常に気を配り、ウイルスを持ち込まないようにすることが重要です。
必要な治療や検査は延期せずに行うことが重要
特に急を要していない場合、感染予防の観点から、なるべく通院を避けたほうがいいのか心配されている方もいらっしゃると思います。医療現場が逼迫しているというのは事実ですが、新型コロナウイルス感染者以外の患者さんも含め、必要な方に必要な治療を行えるよう、国を含めて様々な政策や取り組みが行われているところです。
新型コロナウイルス感染症が流行している今、不要不急の病院受診を避けるということは大事ですが、必要な治療や検査は延期せずに行うことが重要です。
不安や疑問、心配なことがあれば、自己判断をせず、現在の状況に応じた判断と今後の予定について、かかりつけ医としっかり話し合ってみてください。インターネットや新聞・テレビなどから得た情報だけに頼らず、自分の体のことをわかっている、かかりつけの医療機関と話し合うことが大切です。
味覚異常・嗅覚異常については、自己判断せずかかりつけ医に相談を
新型コロナウイルス感染の症状として、味覚異常や嗅覚異常が挙げられますが、そのような症状が出るのは感染者のうち30%との報告もあります。
味覚に異常を感じたときに、抗がん剤の副作用か、新型コロナウイルス感染なのか、不安に思われる方がいらっしゃるかもしれません。確かに、抗がん剤の副作用として味覚異常が出ることはしばしばみられるので、がん患者さんで味覚異常・嗅覚異常が出たからといって、ただちに新型コロナウイルス感染症とは言えないと思います。
ただし、それまでになかった新しい症状として現れた場合は、新型コロナウイルス感染の可能性も考えられるので、発熱やせき症状など、全身の症状を踏まえつつ、かかりつけ医と相談するようにしましょう。
睡眠・食事・適度な運動で、体力を維持しましょう
外出自粛が長期化する生活において体力を維持するために、睡眠を十分にとり、栄養バランスのとれた食事をきちんと召し上がって、適度な運動を行い、生活のリズムを作るようにしましょう。
人との距離を保って接触を防ぐことができれば、ご近所を散歩したりしても大丈夫です。家のなかでは、テレビ体操やラジオ体操など、無理せず体を動かすことで気分転換をはかりましょう。また、外出自粛中は、ついアルコールの摂取量が多くなる傾向になるようですので、飲み過ぎには注意してください。