口と体を意識して動かしましょう

摂食嚥下障害の方や年配の方の誤嚥を予防するためには、食事の際の姿勢や、食べるときに使う筋力を維持することが大切です。外出する機会が減ると、会話に伴う口の動きが減り、筋力も落ちがちになってしまいます。どんな運動を取り入れると良いか、歯科、高齢者歯科、摂食機能障害・リハビリテーションを専門とされている、歯科医師の戸原 玄先生に伺います。

TOPICS

  • 喉の筋肉を鍛えましょう
  • 胸を張って肩を開きましょう
  • 肋間筋を伸ばしましょう
  • ハムストリングスを伸ばして姿勢良く

加齢やさまざまな病気などが原因で、ものを食べたり飲んだりするときに、口の中のものを胃に送り込む「嚥下(えんげ)」の機能が低下し、食道に入るべきものが誤って気管に入ってしまうことを「誤嚥(ごえん)」と言います。誤嚥を防ぎながら食事を楽しむには、姿勢に気をつけることが大切です。

ポイントは、食事の際に、首の位置が体に対してまっすぐになるように深く椅子に腰掛けること。ハムストリング(太もも裏の筋肉)が硬くなっていると、前かがみの姿勢になりがちです。肩が閉じて背中が丸まっていると、むせてしまったり、飲み込みがうまくいかなくなったりする原因にもなり、誤嚥を引き起こしてしまうことがあります。

誤嚥を予防するためには、日頃から筋肉を意識した運動を取り入れていると安心です。私の患者さんにもおすすめしている、家ですぐにできる運動4種を紹介します。

喉の筋肉を鍛えましょう

<ものを飲み込むときに使う喉の筋肉を鍛える運動>
 1. 喉仏の上についている筋肉を意識します。
 2. 口を思いきり大きくあけ、10秒キープします。これを繰り返します(目安は5回×2セット)。

胸を張って肩を開きましょう

<「むせ」を防ぐために胸を張って肩を開く運動>
 1. 水の入ったペットボトル(500ml)を両手で1本ずつ持ちます。
 2. 両手を胸の前で揃えては後ろに引き、胸を張りながら、肩を開いて肩甲骨を寄せる、という動作をゆっくりと繰り返します(目安は10回)。

肋間筋を伸ばしましょう

<肺が広がり呼吸が楽になる「肋間筋(肋骨をつなぐ筋肉)」を伸ばす運動>   1. 胸の位置で腕を組みます(体が硬くて難しい場合は、手のひらを重ねた状態で両腕を伸ばします)。
 2. 鼻でゆっくり息を吸いながら、腕を組んだ状態のまま頭上までゆっくりと腕を持ち上げます。
 3. 口でゆっくり息をはきながら、腕を組んだ状態のままゆっくりと下げます。1〜3を苦しくない程度に繰り返します(目安は10回)。

ハムストリングスを伸ばして姿勢良く

<深く腰掛けて座る姿勢を助ける「ハムストリングス」を伸ばす運動>
 1. 椅子に右足をのせ、右足の膝は曲がらないように伸ばします。
 2. 両手で右足の太ももを上からおさえ、ハムストリングスが伸びるのを意識しながら10秒ほど伸ばします(目安は5回)。
 3. 左足も同様にします。

家で過ごす時間が長く続く生活では、筋力が落ちてしまいがちです。ぜひ、意識してストレッチをしてみてください。体に無理なく、気持ちよいと思える程度に筋肉を伸ばしましょう。年齢に関わらず、家族みんなで取り組んでみても良いですし、仕事の合間などに行えば、気分転換にもなります。



プロフィール

戸原 玄(はるか)先生

東京医科歯科大学 大学院歯学総合研究科 医歯学専攻 老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野教授

日本摂食嚥下リハ学会認定士、日本老年歯科医学会認定医および認定医指導医、日本老年歯科医学会専門医および専門医指導医。日本老年歯科医学会理事、日本摂食嚥下リハビリテーション学会理事、日本障害者歯科学会評議員も務める。

  • 取材・文/おいしい健康編集部(web取材)

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