無理をせず、心身を休めることも大切です

新型コロナウイルス感染症が広がるなかで、どのように感染を防ぐべきか、また、勤務などで外出をせざるを得ない状況にいらっしゃる方が、どのように過ごすことが大切か。毎日を健やかに過ごすためのポイントを、国立がん研究センター中央病院感染症部長の岩田敏先生に伺いました。

TOPICS

  • 感染予防には、「3つの密」を避けて、こまめな手洗いの励行を
  • 外出を要する方は、ご自身の健康状態の確認を
  • ストレスを減らし、無理をしない・させないことが大切
  • 自宅療養時は体調の変化に注意し、早めに医療機関に相談を
  • 生活リズムや栄養バランスをととのえて、免疫力の維持・向上を

感染予防には、「3つの密」を避けて、こまめな手洗いの励行を

新型コロナウイルスは、くしゃみやせきのしぶき(飛沫)の中にいる新型コロナウイルスを直接浴びたり、ウイルスを含んだくしゃみやせきのしぶきがついたものに触れた手で鼻や口を触ったりすることで感染します。また、ウイルスを含むしぶきの粒子は、空中にしばらく漂っていると言われています。

そこで、感染を予防するためには、外出せざるを得ない場合に鼻と顎を覆った形でマスクを正しく着用し、こまめな手洗いを心がけ、「換気の悪い密閉空間、人が密集する場所、密接した近距離での会話」の「3つの密」を避けることが大事になるという訳です。

外出を要する方は、ご自身の健康状態の確認を

お仕事などで外出をせざるを得ないかたもいらっしゃると思います。しかし、新型コロナウイルス感染症は既に市中にひろがっており、いつだれがかかっても不思議ではないと考えられます。感染を防ぎ、さらに、自分自身が感染源にならないよう注意をしてください。

自分自身が新型コロナウイルスに感染しないようにするためには、外出の際、先に述べたようにマスクを正しく着用し、外から職場や自宅などに到着したら、必ず最初に手洗いをするようにしてください。手を洗う前に、つり革や手すりなどを触れた手で眼・鼻・口などを触らないようにすることも重要です。

また、自分自身が感染源にならないようにするためには、毎朝、出勤前に体温をはかるなどしてご自身の健康状態を確認しましょう。せき、のどの痛み、体のだるさ、味や臭いの感じ方がおかしい、熱がある、などといった症状を自覚したら、出勤前に勤務先に連絡をし、仕事をお休みされることも重要です。

ストレスを減らし、無理をしない・させないことが大切

通勤・勤務をされるかたは、休息と気分転換を行うことを心がけてください。仕事を抱え込み過ぎないようにし、いつもよりイライラする、気分がいつもより高ぶる、眠れないといった状況においては、休憩をとり、気分転換を行うことが大切です。

人との距離を保ち、接触を避ける形で散歩をしたり、家やオフィスでストレッチや運動を行ったりと、体を動かすことも有用です。ゆっくりと深呼吸をしたり、目を閉じ、瞑想をしたりするのも良いでしょう。リラックスをして食事をとる、ゆっくりと湯船に浸かる、好きな音楽を聴くなど、ご自分にとって効果があり、安全な方法で気分転換をはかることが、ストレス対策になります。

もしも、1週間以上、心身の変化が続くような場合は、無理をせずに上司・管理者に相談をしてください。職場では、普段以上にお互いに声をかけ合い、努力をねぎらい、周りに体調が悪そうな人がいたら優しく接し、休息をとるように促すといった行動が、ストレス対策として有用です

また、管理職の方であれば、ご自身が心身をいたわるセルフケアを率先して実践し、そのうえで、部署の方たちの業務の整理と管理を適切に行い、休息や休日の確保をして、過重労働を避けるように心がけてください。

自宅療養時は体調の変化に注意し、早めに医療機関に相談を

万が一、新型コロナウイルスに感染して軽症だった場合や、新型コロナウイルス以外でもかぜ症状などで自宅療養を行う際、具体的にどのように過ごせばよいか、何に気をつけたらよいかわからず、不安に感じている方もいらっしゃると思います。

その場合は、毎日決まった時間に体温を測定し、症状の変化に気をつけて過ごしてください。発熱やのどの痛み、せきなどの症状の変化、歩行時や階段昇降時に息苦しさを感じる、といったことがあれば、早めにかかりつけの医療機関に相談するようにしましょう。

かぜ症状のある同居のご家族がいらっしゃる場合は、お互いにマスクを正しく着用し、食事は別々の部屋でとったり時間をずらしたりするなどして、接触を避けるように気をつけましょう。

生活リズムや栄養バランスをととのえて、免疫力の維持・向上を

外出自粛が続く生活においては、ご自宅で過ごす時間が多くなると思います。免疫力を少しでも維持・向上するためには、睡眠を十分にとり、適度な運動を行いながら、生活のリズムを作ることが大切です

また、栄養バランスのとれた食事をきちんととることも重要です。食事の際には、感染症を防ぐはたらきのあることが知られている「腸内細菌叢(腸内フローラ)」のバランスをととのえるために、ヨーグルトや納豆などの発酵食品を召し上がるのも有用です。



プロフィール

岩田 敏先生 

国立がん研究センター中央病院 感染症部長・感染制御室長

慶應義塾大学医学部卒業後、同大学小児科学教室に所属し、小児の総合医として幅広く小児医療に携わるとともに、小児科学、感染症学の臨床・研究・教育に取り組んできた。国立病院機構東京医療センター統括診療部長などを経て、2010年より慶應義塾大学医学部感染制御センター教授、2014年より同大学感染症学教室教授を歴任し、2017年より現職。日本感染症学会前理事長。日本感染症医薬品協会理事長。

協力:国立がん研究センター中央病院 感染症部  小林治医師、塩塚美歌医師

  • 取材・文/おいしい健康編集部(メール取材)

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